佐渡汽船(新潟県佐渡市)は、2024年問題と環境問題に対応するため、複数の温度帯の貨物を1つのコンテナに集約している。
佐渡汽船株式会社(新潟県佐渡市)と佐渡汽船運輸株式会社は保冷技術開発のアイ・ティ・イー株式会社と連携し、新潟両津航路で「アイスバッテリーシステム」を使用した新たな保冷運送サービスを開始する。すでに試験的に一部企業との取引で運用開始しており、7月以降の本格始動を目指す。
アイ・ティ・イーは低温物流のサービスを展開する企業。国内外250の企業や自治体への導入実績を持つ。同社が開発した「アイスバッテリーシステム」は、冷凍庫で一度冷やすと数時間冷たさを保ち続けることのできる保冷剤。使用する枚数によって変わるが最大160時間温度を保持でき、冷やせば繰り返し使用できる。なお、温度帯の調整も可能だ。
佐渡汽船によると、これまでの氷やドライアイスを使ったコンテナ輸送には保冷時間などの課題があり、一方でカーフェリーでトラックを使い直送する方法では自動車のアイドリング時間やドライバーの労働時間が長いという問題点があった。今回「アイスバッテリーシステム」を使ったコンテナ輸送で、より高いレベルの保冷輸送を実現するとともに、運送業界の2024年問題の解消や、二酸化炭素排出量の抑制を目指す。
今回の運用は、6フィート(2トン)コンテナにアイスバッテリーで温度管理したロールボックスパレット4台を格納する形。既存の輸送では温度帯ごとにコンテナや輸送トラックを使わなければいけなかったが、「アイスバッテリーシステム」はロールボックスパレット単位で温度管理ができるため、コンテナとトラックに冷凍品と冷蔵品、常温品を混載可能で、輸送の効率化とコストダウンを図ることができる。
なおアイ・ティ・イーによると、一つのコンテナに複数温度帯の荷物を混載した海上輸送は国内初となる。
6月21日、佐渡汽船新潟事務所で会見を開いた同社の尾渡英生代表取締役社長は「弊社グループは2年ほど前から、事業再生のため新しい経営陣で様々な取り組みを進めている。そういった取り組みの中で、こうした新しい物流サービスの提供も経営改革のなかの取り組みとして進めてきた」と説明。
一方、アイ・ティ・イーのPankaj Garg(パンカジ ガルグ)代表取締役CEOは「この低温物流によって、生鮮食品から医療品まで様々なものが佐渡へ届き、逆に佐渡産品が東京へ行くことにもなる。(モノが行き来することで)佐渡へ行く人が増える。私には、新しい経済が発展する可能性が見えている」と期待を込めた。
現在は主に、既存の顧客を対象に新潟発の便で試験運用を行い、7月以降に本格的に始動する。直江津小木航路については、新潟両津航路での状況を見ながら導入を判断していくという。